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写真:長久手(平成)こども塾リーフレット
<ウッドマイルズセミナー参加報告>
フードマイルズという概念は、1990年代にティム・ラング(英)が提唱し手以来それなりの市民権を得てきています。我々が食べている食料が輸送されてきた距離をカウントして食のかかえている諸問題をあぶりだそうという試みです。食料自給率40%という最低の国日本では、とりわけ強く意識しなければならない概念であり、地産池消運動とも連動するモノサシだと思います。
その木材版がウッドマイルズです。安い外材に押されて不振を続け、間伐・枝打ちなどの管理の手が入らず、人工林が荒廃し、林業労働者が激減している現状を打破するためのひとつのツールとして2001年に発案されたものです。2003年には岐阜県立森林文化アカデミー学長の熊崎実氏を会長としてウッドマイルズ研究会が結成され、ホームページなどでの情報発信を始めています。その研究会が主催したセミナーが本日(6/3),長久手町と名東区で開催されたのです。
午前中は、長久手町立・平成こども塾(なんて嫌な名前なんだろう!)の見学会。岐阜県立森林文化アカデミー卒業生で作るNPO法人「WOOD AC」が設計コンペで優勝して施工管理した建築物。施工は旧加子母村の中島工務店。東濃ヒノキの家の産直をやっている根性の工務店です。
太い丸太を独特の樹状トラス構造で組み上げた堂々たる建物で、それでいて周囲の里山にマッチしており、内部も木の香りが豊かに漂っていました。天井裏に回廊状のスペースがあって遊び心もあります。出来上がりもさることながら、設計段階、材木の切り出し(加子母村)などに長久手町の子供たちが参加して、環境教育を兼ねたところがコンペでの勝因になったそうです。プロの林業技術者を育てることを旗印にする岐阜県立森林文化アカデミーの若い卒業生たちの心意気と意気込みが感じられる建物でした。ちなみに、建物本体が6000万円、外構と炊事や食堂のスペースなどで1600万円だったそうです。
午後からは、会場を名東区に移して座学。定員50名の募集に対して30名ほどの参加でした。予想に反して、若い人(女性も)が多かったのは森林アカデミー関係者が多かったせいかもしれません。
開会の挨拶に立った熊崎さんが、ウッドマイルズの概念は川上と川下の協働作業があった初めて成立するのだという枕詞から始まって、生産する側の現状、問題点に目をつぶって川下側にただ「この木を使ってくれ」というのは木がひける、川上側として品質や価格などでいっそうの努力が必要ではないか、と述べられたのが印象的でした。
藤原敬氏(研究会代表運営委員)からは地球温暖化の概説から始めて、ウッドマイルズの定義解説や、研究会3年間の活動紹介がありました。その定義によれば、「ウッドマイルズ」はその材木が運ばれてきた距離、「ウッドマイレージ」は材木の体積x距離(km・m3)、「ウッドマイレージCO2」はマイレージのCO2換算量(kg)です。
滝口泰弘氏(研究会事務局長・WOOD AC代表理事)からは、長久手こども塾に関するウッドマイルズ計算の具体的なプロセスと結果の解説とともに、こども塾建設過程が写真で紹介されました。滝口さんの森林文化アカデミー卒業論文がウッドマイルズの具体的な計算例第1号だったようです。配布された要旨集巻末にはウッドマイルズ計算マニュアルが添付されていました。目下ヴァージョンアップ作業中ということで、近々公表されるとのことです。計算は簡単なのですが、部材ごとの生産地の把握(要するにトレーサビリティの問題)が難しいのと、各種の輸送手段につけるパラメーターに入力する数値などにも難しさがあるようでした。
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