パブコメを出そう!福島第一原発から汚染水を流すべきではない
2020-05-11


1)そもそも福島第一原発は放射能の追加放出の権利など無い
 放射能量をよう素換算したINES(国際原子力指標尺度)評価によれば、福島第一原発事故で東電は90京Bq(=900ペタBq)(1京=1万兆または10ペタ)の放射能を放出して太平洋と17都県の陸地を過酷に汚染した。世界中の原発が通常運転時に排出している全ての放射能の合計値をはるかに超える放射能を出してしまったのである。その事故炉が事故前の基準に則って年間22兆Bqのトリチウムを流してよいなどと主張することが許されるわけがない。まして、ストロンチウム-90などの核種を告示限界濃度以内なら流してよいなどと言えるわけがない。

2)ロンドン条約の精神に違反する
 「御意見を伺う場」の席上、福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は、「地元の海洋を利用し、その海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としている観点から、海洋放出には断固反対であり、タンク等による厳重な陸上保管を求める」と述べた。また、福島県森林組合連合会および福島県農業協同組合中央会の代表も、大気放出、海洋放出双方に反対の意見を述べた。こうした中で、福島市の木幡浩市長が「福島と名前の付かないところで海洋放出してほしい」、「巨大なタンカーで持っていき、できるだけ影響の少ないところですべきだ」と発言したことが報道された。これに対して資源エネ庁ALPS小委員会のは「海上からの放射性廃棄物の海洋投棄は、ロンドン条約及び原子炉等規制法により禁止されている」と回答している。
ロンドン条約は、海洋汚染を防止するための国際条約である。この条約名を聞くと、し尿の外洋投棄のことを思い出す。愛知県にはし尿投棄船の母港が2か所あった。津島市の日光川河口と、西尾市の平坂入江だ。愛知県内だけでなく、遠く京都などからも運ばれてきていたようである。この船は、伊勢湾口を出て、黒潮本流に投棄していたのだが、燃料代をケチって近場で栓を抜くというような不祥事もあり、何度か摘発されていた。この外洋投棄は、ロンドン条約で制限され、ついには全面禁止になって途絶えた。
外洋投棄がだめなものを、沿岸から放流するなら良いというのは全く変な話である。沿岸でやってはいけないから、外洋だけ例外として許されていたのである。ロンドン条約で海洋投棄が禁止されている放射能汚染水を岸から流してはいけない。

3)放流されるのはトリチウムだけではない
 2年前の公聴会で明らかになったことは、処理水にはALPSで処理できないトリチウムだけが含まれているのではなく、原子炉等規制法で定められた基準を超える他核種が複数含まれていることであった。素案では、トリチウムを除く核種の告示濃度限度比総和が1未満になるまで二次処理(ALPSにもう一度通す)してから放出するとしている。汚染水中のある核種の濃度を告示濃度限度で割り算し、他の全ての核種についても計算して、その総和が1を超えないようにするということである。とりわけ問題なのは半減期29年で生物蓄積性の高いストロンチウム-90を全ベータ測定で5Bq/L(告示濃度限度は30Bq/Lなので、濃度限度比0.17相当)まで許容していることである。
 そもそもALPSの処理能力や処理水のチェックは万全なのだろうか。ガンマ線を出さないトリチウムやストロンチウム-90の測定は簡単ではないので、検出限界や測定頻度が放出のペースに対して間に合うのだろうか。ウソやトリック満載の東電や経産省のことだから信用できない。
 さらに、ALPS処理で発生する高濃度スラッジと高濃度に汚染したカートリッジの発生量は膨大なものになっていて、その置場と管理状況についても注視していく必要がある。東電と経産省は、この廃棄物に関する情報を公開するとともに、その見通しについても明らかにするべきである。
[原発]

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